キャビア・蝶鮫
美深町

detail_mv
蝶鮫の卵巣をほぐし塩で漬けたキャビアは、世界3大珍味として知られている。蝶鮫は、鮫と外見が良く似ているが一般の魚と同じ仲間で、約3億年以上前から存在したといわれている古代魚だ。キャビアの持つ独特の風味が愛され、ヨーロッパ諸国では古くから王に献上され珍重されてきた。2020年、キャビアの伝統に新しい風を吹き込む道産ブランドが誕生した。それが「美深キャビア」だ。
美深町に流れる天塩川には、明治頃まで多くの蝶鮫が遡上していた。江戸時代後期の記録では、群れをなして川をさかのぼる姿が目撃されている。しかし、環境の変化により、蝶鮫は天塩川から姿を消した。1983年に、町おこしの一環として蝶鮫の養殖に着手。300尾が町内の三日月湖に放流された。だが、蝶鮫はふ化率が低く、生まれてから抱卵するようになるまで8年かかる。水槽での飼育に切り替えたものの思うように収穫量は増えない。美深町のキャビアは温泉宿「びふか温泉」の名物料理として、限られた人だけが知る存在だった。
転機となったのが、蝶鮫に”季節を感じさせる”試みだ。冬の初めに水槽の気温を下げ、ふ化のシーズンである春に向け徐々に気温を上げていく。その結果、ふ化する蝶鮫が大幅に増えた。40年にもわたり試行錯誤を重ね、ついに瓶詰の美深キャビアが完成した。緑色を帯びた美しい粒に、上品なこく。長い年月をかけて創られたキャビアは好評を博し、製造した170個は瞬く間に完売。北海道の地魚の美味しさを追求する無双の店主も、その味に唸った一人だ。
美深キャビアは輸入物と異なり塩分控えめ。キャビア本来の濃厚な旨味をしっかり感じられるのが魅力だ。養殖のため通年提供できるが、旬は冬から春にかけて。無双では、1~4月の最も美味しい時期にこだわって仕入れている。キャビアそのものを提供するのみならず、蝶鮫の刺身を使った料理の上に載せることも。蝶鮫の身のコリコリした食感とたんぱくな味のファンは多い。亜麻仁油をかけたカルパッチョ風。貴重な肝を贅沢に使った肝和えなど、その時々の味付けでキャビア・蝶鮫の新たな魅力を引き出した逸品を堪能してほしい。